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奨学金の申込は大変?審査は厳しいって本当?-奨学金制度のキホン-

コラム
2022.05.30

知っているようで意外と知らない奨学金制度について、『奨学金制度のキホン』と題したシリーズでわかりやすく解説していきます。

今回は「奨学金の申込は大変?審査は厳しいって本当?」をテーマにお送りします!

POINT

 

✔️ 手続きは「学校経由」と「直接申込」がある

✔️ 書類は「手書き」や「オンライン」で作成

✔️ 基本は書類審査で、「小論文」や「面接」があるところも

 

奨学金の申込方法は?

奨学金は利用したい学生さん(もしくはその保護者)が申し込み、奨学金制度を設けている団体などからさまざまな項目で審査を受け、条件が合えば奨学生として採用されます。

つまり、申し込んだからといってすぐに奨学金が振り込まれたり、必ず奨学生になれるわけではありません。

返済不要の給付型奨学金や、多額のお金を支援してもらえたり、魅力的なサポートを受けられる奨学金の場合、学生さんの申し込みが殺到し、競争率が高くなることもあります。

ところで、奨学金の利用を初めて考える方であれば、

  • どこへどう申し込めばいいのか
  • 手間がかかって大変じゃないか
  • 審査は厳しくないか

など気になりますよね。

奨学金を申し込むために準備するものや申請手順、審査の基準や審査方法はさまざまです。申込方法や審査が簡単な奨学金もあれば、たくさんの書類を用意しなければならなかったり、第二次審査、第三次審査、など何度も審査を通過しなければならないものもあります。

どのようなものがあるか、簡単にみていきましょう。

奨学金の申込方法は2つ

ひとつめは「学校経由」の申し込みです。

こちらのタイプは、学生さんが指定された締め切りまでに用意した申込書類を、担任の先生や奨学金担当の窓口まで持っていきます。

同じ奨学金でも、通う学校に応じて募集開始日や締切日が異なるので注意してください。

例えば、A高校では5月21日までに書類を提出しなければなりませんが、B高校では6月1日が締切日になっている、といったことです。必ず学生さんご自身が通う学校の指示に従ってください。

ふたつめは「学生さんが直接、奨学金を提供している団体の窓口へ申し込む」方法です。

学校を通さず、学生さんが申込締切日までに自分で問い合わせをしたり、書類提出を行います。各制度団体の指示を確認し、提出方法や提出先、締切日を間違えないようにしましょう。

「学校経由」も「直接申込」も、どちらか片方で済む場合もあれば、学校と団体の両方へ手続きをする場合もあります。

2つの申込方法を紹介しましたが、書類の作成方法やそれに伴う提出方法にも種類があります。

書類の作成方法は2つ

ひとつめは「手書き」です。

学校からもらったり自分で印刷した紙の書類に、手書きで必要事項を記入し、指定された書類を添付します。

完成した書類は学校へ提出するか、封筒に入れて郵送したり、受け付けているところは少ないですがファックスで指定の窓口へ送ります。制度によって違いがありますので、必ず募集要項を確認してください。

ふたつめは「オンライン(インターネット)」での申し込みです。

該当奨学金情報を掲載しているホームページで「申込フォーム」へアクセスする場合や、ホームページからダウンロードした書類をテキストファイルなどで開いて記入し、「メール」で送る場合があります。

オンライン申請はパソコンやスマートフォン(※対応している制度に限る)があればいつでも簡単に提出できるため、とても便利です。近年、申込方法に取り入れている制度団体が増えています。

手書きのみ、オンラインのみ、など、どちらかのやり方で済むこともあれば、手書きとオンライン両方を使って申し込むようになっていることもあります

例えば、日本学生支援機構の奨学金だと、学生さんは手書きとオンラインの両方で申し込みをします。学校からもらう申込用紙を手書きで作成し、必要な書類を添付して学校に提出すると同時に、「スカラネット」という独自のインターネットシステムに登録を行います。その後、マイナンバーに関する書類を手書きで作成し、郵送で日本学生支援機構に直接提出します。

このケースでは、

  1. 学校への書類提出
  2. インターネットでの情報登録
  3. 機構への書類郵送

と、ひとつの奨学金申込について異なる手続きをしています。工数が多くてややこしそうに見えますが、ひとつひとつ丁寧に落ち着いてやっていけば大丈夫です。

その他の制度でも、書類の作成方法、申込方法(申込先)は間違えないように注意しましょう。

なにを準備すればいいの?

大まかに説明すると、「個人情報」「振込口座情報」「応募の動機などの願書」「収入状況」を証明できるものがほとんどの制度で必要になります。

「個人情報」の準備は、市役所から戸籍証明書を取り寄せたり、身元確認のために運転免許証や学生証、顔写真の撮影などをし、必要であればコピーして添付するという作業が要ります。

「振込口座情報」は、実際に奨学金を振り込んでもらう銀行口座です。銀行口座を持っていない学生さんも多いと思いますので、早めに口座開設の手続きをしておきましょう。

利用したい奨学金制度によっては取り扱わない銀行口座があるので注意してください。例えば、現在普及しているインターネットバンキングは取り扱いのない奨学金制度が多いようです。

  • 例:日本学生支援機構
    • <取り扱い金融機関>
    • 国内のゆうちょ銀行、都市銀行、地方銀行、第二地方銀行、信用金庫、労働金庫、及び信用組合(一部を除く)。なお貯蓄預金口座は使用できません。
    • <取り扱わない金融機関>
    • 外国銀行、インターネット専業銀行(楽天銀行、住信SBIネット銀行、ソニー銀行、ジャパンネット銀行、じぶん銀行等)、その他一部銀行(イオン銀行、新生銀行、セブン銀行、あおぞら銀行等)、一部信用組合。

「応募の動機などの願書」は、どうして奨学金が必要なのか、何に使う予定なのか、などを簡単に説明する作文欄が用意されています。書類審査の重要項目なのでわかりやすく書きましょう。

「収入状況」の証明には、給与明細や世帯の課税・非課税証明書(所得証明書)の原本などを、保護者に用意してもらうよう早めに頼んでおきましょう。

ほかにも「マイナンバーの情報」や「成績表」、在学校の先生による「推薦書」や保護者のコメントが求められたり、選考のために「小論文」の提出など、利用したい奨学金制度によって、必要な書類が異なってきます。

提出書類が多い奨学金ほど準備が大変で、少ない奨学金は手続きが簡単です。

もちろん、すべて制度ごとに設定されている「申し込みの締切日」に間に合わなければ意味がありません。

必ず締切日をチェックし、スケジュールをたてて、早め早めの行動を心がけましょう。

学校で忙しい時は、保護者に準備を頼んでもいい?

基本的に、提出書類は「学生さんが自分で準備する」ものですが、保護者の方が代わりに準備することが禁止されているわけではありません。

ただし、小論文などの条件がある奨学金は面接も併用しているケースが多く、面接では提出書類についてより説明を求められることがあります。学生さん自身が考えたり答えなければならないものは、保護者ではなく必ず学生さんが準備しましょう。

また、保護者が書類を作成したとしても、奨学金を利用するのは学生さん本人です。理想は、保護者と学生さんが一緒に書類を準備すること。保護者の他に、学校の先生や奨学金窓口へ相談するのも良いでしょう。

学生の立場では、まだ金銭感覚が培われていないことが多いため、必要以上に借りて返せなくなったりしないよう、奨学金の準備は大人と一緒に行うのが良いでしょう。

準備でわからないことがあったらそのままにせず、必ず質問して解決しましょう。日本学生支援機構では「奨学金チャットボット」という、AIが24時間自動で対応してくれるサービスがあります。必要な方はぜひ利用してみてください。

引用:日本学生支援機構「奨学金チャットボット」

ここまで申し込みについて解説してきましたが、ここからは「審査」についてお話ししていきます。

奨学金の審査って?

奨学金の審査は各制度によって異なります。審査が一回の書類審査(一次審査)で済む制度もあれば、二次審査、三次審査と行われる制度もあります。

よくみられるポイントは以下の通りです。

① 「成績が優秀か」や「奨学金が必要な収入状況」かどうか

多くの制度は募集要項に「学力基準」「所得制限」を明記しており、その情報が正しいか、各制度団体の役員などが申込書類や添付された証明書をチェックします。

奨学金はさまざまな事情で家計が厳しいものの、学ぶ意欲の高い優秀な学生さんを支援するものなので、基準に当てはまらない申込内容であれば審査の通過はできません。

また、審査に通りたいからといって「嘘の申告」をしてしまうのはご法度です。

万が一、嘘の申告で審査を通過してしまっても、奨学生は年に数回状況をチェックされるので、あとから虚偽情報だと判明する可能性が高いです。その場合、学生さんは奨学生資格が剥奪され、さらに“ペナルティ”が科せられます。

例えば日本学生支援機構の場合、不正に奨学金を受給したことが判明すると、全部または一部の請求が行われ、長い間支払いを延滞すると金融機関のブラックリストに入れる措置がとられ、今後長期間クレジットカードやローンの利用ができなくなります。期限までに払わなかった方へは最終的に財産の差し押さえが行われます。

審査に通らなかったらどうしよう、と不安になる気持ちも分かりますが、書類には必ず正確な情報を書いて提出しましょう。

②「小論文」や「面接」で、学ぶ意欲をみる

奨学金の申込書類には、大抵、応募の動機や奨学金の使い道について学生さんが書く作文の欄があります。

それとは別に、学ぶ意欲を図るため「小論文」を課題として提出させる制度団体もあります。

小論文のテーマは最初から公表されているところもあれば、他の応募希望者との公平性を保つために、事前公開を行っていないところもあります。

例として、キーエンス財団の奨学金は一次選考と二次選考があり、それぞれ別のテーマの小論文を提出しなければなりません。テーマは募集開始まで非公開で、毎年同じものではなく、年度によって変更されています。

過去には「あなたがこれまでに感動したこと」や「自分が周りから持たれている印象」などのテーマが設定されたそうです。

Cronoで公開している「キーエンス財団の奨学生の先輩による体験談」では小論文について先輩がお話ししていますので、ぜひ参考にしてください。

指定会場やオンラインでの「面接試験」を実施する奨学金もあります。面接で聞かれる質問は決まっていませんが、

  • 自己紹介
  • なぜ奨学金を申し込むのか
  • いまの生活や家庭の収入状況など
  • 奨学金をどう利用したいか
  • 進学を希望する理由
  • これまで学んできたこと、これから学びたいこと
  • 将来の夢

など、基本的に奨学金の申込書類をもとに考えておける内容が多いようです。そのため、奨学金の申込準備は保護者任せにせず、学生さん自身が率先して行うと良いでしょう。

面接時のマナーについて不安があれば、学校の先生などに相談をおすすめします。周りの人に頼んで面接の練習に付き合ってもらうのも良いでしょう。

結局、奨学金の審査は厳しいの?

奨学金はたくさんの学生さんが希望してくるため、審査側はさまざまな条件を設け、支援をしたいと思える奨学生を選びます。

審査の難易度はそれぞれの制度が持つ性質(採用人数、条件、選考回数など)やその年の応募者数にもよるので、一概に厳しいとはいえません。

審査をパスするには、まず「申し込みたい奨学金の採用基準を満たしていること」がポイントです。競争率が高くない奨学金制度だと、基本的にここをクリアしていれば奨学生として採用される可能性があります。

小論文や面接が必要なところは、奨学金を提供する側にとって魅力が感じられる「自分の勉強への意欲」を表現できるよう、各団体の奨学金に対する理念を参考に、ご自身の考えを整理して伝える工夫をしましょう。

まとめ

はじめて奨学金に申し込む方は、手続きの複雑さや審査の厳しさに不安がありますよね。ですが、整理してみれば申し込みは「学校経由」もしくは「直接申込」で、書類の作成方法は「手書き」か「オンライン」。これらを組み合わせているだけなので、やることはシンプルです。各制度の案内をしっかり読み、わからないところは相談していきましょう。審査もすべて厳しいわけではありません。

どんな制度の手続きでも必ず守らなければいけないのは、「申込の締切日」と、「審査に通るか不安だからといって嘘の申告はしない」ことです。

1カ所だけではなく複数の奨学金に応募して採用の可能性を広げる方法もあります。頑張ってくださいね!