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奨学金の「返済免除」や「負担額減額」の条件って?

返済支援
2022.02.15

奨学金を借りていても、学生のあいだ、常にその存在を意識することは少ないかもしれません。しかし卒業後は違います。返済不要の奨学金(給付型奨学金)を借りている人以外は、会社に勤めている・勤めていないにかかわらず、毎月一定の金額を借用元に返さなければならないのです。給与や貯金が少ない場合、毎月の返済は意外と大変。嫌でも奨学金のことを考えなくてはなりません。

しかし「ある条件」に当てはまれば、返済免除や減額の手続きが可能なんです。

今回は、返済の義務がある奨学金が「免除」や「負担額減額」となるケースについて解説します。

貸与型奨学金は「返済」の義務がある

この記事を読んでいるあなたはこれから奨学金を借りようとしている学生さん(をお持ちの保護者様)ですか?
それとも、すでに借りている・返済中の方でしょうか?

「これから借りようと考えている方」であれば、早くから 返済 について考えるのはとても良いことです。

貸与型奨学金は「利子」のあるケースも多く、卒業後にさまざまな事情で返せないでいると、延滞金も発生し、金額が膨らみ続けてしまいます。

最終的には自己破産を選択することになり、そうした若者が社会問題として取り上げられることも年々増えてきています。

これから借りる方は返済しなくても良い「給付型奨学金」から申し込みをするのがおすすめです。

募集枠が少ないイメージの給付奨学金ですが、決してそうではありません。

全国で行われている奨学金事業は「貸与型+給付型」合わせて年間およそ 1 万件。そのうち、なんと 7,867 件を給付型奨学金が占めていることをご存知でしょうか(2016年時点、Crono調査)。

最も有名なのは日本学生支援機構の給付型奨学金で、2020年4月から新制度になりました。

以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひ読んでみてくださいね。

【日本学生支援機構】2020年、新制度になった「給付型奨学金」とは?

そのほかにもご自身で学校に問い合わせをしたり、CronoのMy奨学金サービスを利用して、自分に合った給付型奨学金を探してみてください。

自分に合った奨学金を見つけられる「CronoのMy奨学金」を使ってみた

 

もちろん条件や審査があるので、申し込んだら必ず受かるというわけでは残念ながらありません。

貸与型奨学金しか借りられないこともありますので、これから奨学金を借りる方も、今回の記事を読んでおくにこしたことはないでしょう。

「すでに借りている・返済中」でこの記事を読んでいる方の中には、

「貸与型奨学金を選んだら、あとから“返済なし”になんてならないのでは……?」

と思っていらっしゃるかもしれません。

しかし、貸与型奨学金を利用して進学・卒業をした際でも、条件によっては 返済免除負担額減額 を申し出ることが可能です。

下記の記事でも「返済できない場合どうなるのか」や「返済がきつい時の対処法」を紹介し、返済免除や負担額減額についても軽く触れています。

奨学金の返済はいつから始まっていつまで続く?返済額と返済期間、さらには返済がきつい場合の免除・猶予方法を解説

今回の記事ではより詳しく、その申請に必要な条件を解説していきます。

 

“進学後”に「返済免除」される条件(在学中)

 

貸与奨学金事業を行っている団体のうち、「日本学生支援機構」については進学後に免除申請が条件付きで可能です。

日本学生支援機構の制度

日本学生支援機構で貸与型奨学金を借りている方が進学中に「返済免除」となるのは下記のケースです。

大学院で優れた成績を修める

日本学生支援機構は大学院生の中から「業績優秀者返還免除候補者」の推薦を、各大学へ依頼しています。

これは学生の学修に対する意欲向上(インセンティブ向上を目的としており、

  • 特に優れた業績による返還免除
  • 返還免除内定制度

の2つが設けられています。

特に優れた業績による返還免除

貸与型奨学金で進学した学生さんのうち、

学院 (修士・専門職学位・博士(後期)課程)へ進み

奨学金の貸与期間中に、学問分野や専攻分野に関する文化・芸術・スポーツにおけるめざましい活躍、 ボランティア等での社会貢献で優れた業績をあげる

各自で大学へ「業績優秀者返還免除候補者」の届出をだし、所属大学から推薦を受ける

「貸与期間中に特に優れた業績を挙げた者」として日本学生支援機構から認定される

と、借りていた奨学金の全額または半額が免除されます。

簡単に免除が決定するまでの流れを説明します。

まず日本学生支援機構から「業績優秀者返還免除候補者」の選定依頼が毎年12月ごろに大学へ送られます。これを受けて大学は学内で免除申請を望む学生さんから申請書を集め、学内選考委員会で候補者に選ぶかどうか審議をします。

評価される業績の種類や基準についてはこちらのページに記載されている通りです。

学内で候補者に選ばれた学生さんは、今度は日本学生支援機構内へ書類が送られ、審査をされます。

最終的な合否の通知は6月下旬ごろ。大学院を卒業後に書類が自宅へ届けられます。

注意すべき点は、免除希望者へ申し込みの書類が個別で配られるわけではないということです。

学内の掲示板でお知らせが掲示される場合が多く、希望者は自分で総務課などに行き、申請書類をもらわなければなりません。

申請時期は大学によって異なりますが、「奨学金の貸与が終了する月の属する年度」に行う必要があります。

細かい手続き方法については下記のリンクを参照してください。

おそらくほとんどの方が「大学院卒業」と同時に奨学金の貸与が終了するはずです。この制度の利用を考える学生さんは、大学3年生の学年末から年始にかけて候補者の募集が始まると意識し、チャンスを逃さないようにしておきましょう。

 

昨今、「特に優れた業績による返還免除」について、世界的に猛威をふるう新型コロナウイルス感染症の影響で業績が挙げられなかったケースへの対応措置が特別に設けられました。

詳しくはこちらを参照してください。

 

返還免除内定制度

「博士(後期)課程」または「博士医・歯・薬・獣医学課程」に入学した大学院1年生で、貸与奨学金を借りている方を対象に、業績優秀者返還免除を内定する制度です。

修士課程、専門職学位課程、第一種奨学金(海外大学院学位取得型対象)、第一種奨学金(海外協定派遣型)は対象外なので注意してください。

内定制度の希望者は入学した年度の夏以降に大学へ問い合わせ、大学から推薦をもらった後、日本学生支援機構に認定されることで「返還免除内定者」となります。

審査では

  • 博士課程入試の結果
  • 修士課程の成績
  • 修士課程の研究科長からの推薦

等について評価が行なわれ、貸与期間終了時において日本学生支援機構が定める評価基準を満たすことが見込まれる とされた場合に合格が決定します。

注意する点は、この制度は大学1年次に「内定」が決まるだけであり、免除が履行されるわけではありません。内定者は貸与期間が終了する年度になったら、返還免除の候補者として申請を行うことにより、正式に免除が認定されます。

そのため、内定者でも貸与期間終了前に

 

“卒業後”に「返済免除」される条件

日本学生支援機構については、非常にまれなケースですが、下記の制度が設けられています。

本人死亡や精神・身体障害による返済(返還)免除

  1. 本人が死亡し返還ができなくなったとき
  2. 精神若しくは身体の障害により労働能力を喪失、または労働能力に高度の制限を有し、返還ができなくなったとき
    参考:日本学生支援機構HP「返還免除:死亡又は精神若しくは身体の障害による返還免除」

上記のどちらかに該当するとき、「貸与奨学金返還免除願」を送ってもらい、必要な書類をそろえて届出をすることで、返済額の全部または一部が免除されます。

1. 本人が死亡した

この場合、本人がいなくなったことで奨学金を借りていた事実が同時になくなるわけではありません。

連帯保証人がいるなら連帯保証人が、機関保証を利用していた場合は保証会社が、返済の義務を負うことになります。

しかし連帯保証人が

  • 貸与奨学金返還免除願(日本学生支援機構から取り寄せ)
  • 本人死亡の事実を記載した戸籍抄本、個人事項証明書または住民票等の公的証明書

を提出すれば、連帯保証人は返済が免除されます。

災害や事故、病気など、生きていれば突然何が起きるかわかりません。奨学金を借りて学校に通っている方は、連帯保証人になってもらっている方へ、もしもの時にこのような手続きがあることを伝えておくと良いでしょう。

2.精神や身体に障害を負って返済ができなくなった

死亡まではいかなくとも、病気や事故で重篤な障害を抱えてしまう可能性も考えられます。

そのような時は

  • 貸与奨学金返還免除願(日本学生支援機構から取り寄せ)
  • 返還することができなくなった事情を証明する書類(収入に関する証明書類)
  • 医師または歯科医師の診断書(日本学生支援機構所定の用紙)

を提出することで、返済が免除されます。

ただし、障害の程度やどれだけの収入減少があれば免除されるかなどは公表されていません。

もし申請を検討することになったら、まずは日本学生支援機構の「奨学金相談センター」へ相談しましょう。

連絡先:日本学生支援機構「返還に関するお問い合わせ」

 

 

“卒業後”に「負担額軽減」される条件

卒業後、

  • 地方自治体の「奨学金返済支援制度」
  • 就職先の「企業返済支援制度」

を利用すると、奨学金返済の自己負担額が大きく減らせます。

地方自治体の「奨学金支援制度」

都道府県内や市町村内での定住や就業などの条件を満たした場合、自治体から日本学生支援機構等から借りた奨学金の返済の一部を支援してもらえます。

これらは人口減少に歯止めをかけるべく、「Uターン促進」や出生地以外の地域で就職する「Iターン促進」のために行われています。

お住まいの自治体や就職先の自治体で制度が設けられているか、確認してみてください。

また、こちらの記事でエリア別にもまとめています。ぜひご活用ください。

【制度まとめ】エリア別!自治体が運営する奨学金「返還」支援制度

 

就職先の「奨学金返還支援(代理返還)制度」

学生時代に貸与型奨学金を利用した社員を対象に、奨学金返済を肩代わりする制度を設けている企業もあります。

例:一般財団法人兵庫県雇用開発協会「奨学金返済支援制度導入企業一覧」

学生の集客が難しかったり、離職率を下げ、優秀な人材を確保したい企業がこうした取り組みを行っています。

支援方法は大きく分けて2パターン。

  1. 会社の規定範囲内の金額を、毎月の給与に上乗せして支給
  2. 勤続年数が規定年数に達した際、一度にまとまった金額を支給

就職活動の際には奨学金の返済についてこうした制度も考えながら、企業選択をするのも良いでしょう。

 

 

進学前から貸与型奨学金の「返済免除」を考える

記事の冒頭でもお話しした通り、進学前に返済まで考える場合、そもそも返済が不要な給付型奨学金への申請に挑戦するのがおすすめです。

それ以外だと、下記のような方法があります。

「職業選び」で返済免除を狙う

超高齢化社会が進行し続ける日本では、医療や福祉関係に従事する人手が慢性的に不足しています。そのため、常に人材確保が求められている

  • 看護師
  • 介護職
  • 薬剤師

といった職種は、他の職業に比べて自治体からの奨学金制度や支援制度が充実しています。

特に 病院奨学金制度 は、大学や専門学校などを卒業後、一定期間、指定の病院や福祉施設に勤務することで返済を免除してもらえる特別な制度です。

  • 例:国立病院機構
    看護学校等(国立病院機構附属看護学校、看護系大学、看護専門学校)に在籍する学生で、卒業後、国立病院機構の病院に常勤職員として勤務することを希望する学生

進学先を「奨学金の返済サポートが充実した職業につける学校」で選択すれば、卒業後に返済で悩むことは少なくなるでしょう。

しかしこうした「職業を条件にした返済免除」は

  • 将来の職場が決まってしまう
  • 途中で転職や退職をすると、一括で返済しなければならなくなる

というデメリットもあります。

学ぶためにはお金が必要であり、奨学金の返済を肩代わりしてくれる仕組みはとても魅力的ですが、メリットだけで選ぶのはおすすめできません。

これから生きていくにあたり、ご自身が何を優先したいのか。

じっくりと考えた上で選択をしてくださいね。

 

まとめ

返済の義務がある貸与型奨学金でも、条件によっては進学や卒業後に「返済免除」や「負担額減額」の申請ができます。奨学金の返済に困ってしまったら、今回紹介した制度の利用を検討してみてください。