【日本学生支援機構】2020年、新制度になった「給付型奨学金」とは?
国内で最も多くの学生が申し込みをしている「日本学生支援機構(JASSO)」の奨学金。従来からある貸与型と給付型の2種類のうち、2020年4月から給付型奨学金について “新制度” が設けられています。
今回の記事では、2020年スタートの「 “新” 給付型奨学金(日本学生支援機構)」について、
などといった疑問を解決していきます。これから奨学金を申し込もうと考えている高校生・大学生・保護者さまは必読です。
参考:高等教育の修学支援新制度(授業料等減免と給付型奨学金)| 文部科学省
2004年に設立した日本学生支援機構。
もともとは
といった2種類の “貸与型” 奨学金事業のみを行っており、利用する学生は全員、卒業後の返還が義務となっていました。
しかし2018年から返済不要の「給付型奨学金」が導入されました。
これは当時日本初の試みで、貸与型と同じく対象者は 高校生・大学生。
高校等を初めて卒業した年度の翌年度の末日から大学等に入学した日までの期間が2年を経過していない浪人生や、高卒認定試験の合格(見込)者、外国籍の方も法定特別永住者として在留している人などを含めます(※条件あり)。
といっても誰もが申し込めるわけではなく、
のいずれかに該当していること。そして
が必須条件となっています。
高校生であれば「予約採用」、大学生であれば「学内募集時」に申し込むことができ、給付金額は国公立と私立、自宅通学か自宅外通学かで異なります。
貸与型奨学金との併用も可能なため、給付型奨学金は経済的理由で進学をあきらめていた低所得世帯の生徒が大学等へ進学する、大きな後押しとなってきました。
ただし審査が厳しく、利用しているのは全国で年間2万人程度(『令和元年度「給付奨学生」の採用状況について』,日本学生支援機構)。
年間およそ130万人が利用する貸与型に比べれば非常に狭き門でした。
今回、2019年(令和元年)5月17日に制定された「大学等における就学の支援に関する法律」、通称:大学無償化法 をきっかけに、日本学生支援機構の給付型奨学金制度が拡充されることとなりました。
新たな制度では“一定の要件を満たした学校”を対象に、
が制定されました。
これにより、以前より給付型奨学金に申し込める学生が増えるほか、学校への支払い負担がさらに軽減される見込みです。
新しい給付型奨学金を申し込めるのは
などで、この点は今までの制度とほぼ変わりません。
参考:申込資格・選考基準【高校生等対象】【大学生等対象】 | 日本学生支援機構
変わったのは「世帯収入・成績に関する選考基準」の部分です。
従来の給付型奨学金は審査基準が「世帯収入と成績」のみ。
世帯収入に関しては、住民税非課税世帯などに属する学生だけでした。
住民税非課税世帯とは “世帯全員が住民税を課税されない世帯”のこと。収入を得た人が払わなくてはならない「住民税」(定額負担の「均等割」+所得金額に応じて負担する「所得割」)は、世帯が一定の収入以下の場合、非課税となる措置があります。
※“一定の収入”基準は各地方自治体によって異なるため、お住まいの自治体ホームページなどから確認してください。
新制度では住民税非課税世帯だけでなく、住民税非課税世帯 および それに準ずる世帯 の学生が対象になります。
具体的に、「それに準ずる世帯」とはどの程度の年収世帯なのでしょうか?
家族構成によって目安は異なりますが、4人家族(両親、本人、中学生の兄弟1名)と仮定した場合、
までに属する学生であれば、給付型奨学金の申し込みができます。
さらに収入に応じて下記のように
第一区分 : 住民税非課税世帯(年収270万円未満)…上限額を支援
第二区分 : 年収約300万円未満…上限額の2/3を支援
第三区分 : 年収約380万円未満…上限額の1/3を支援
と分けられ、この区分に基づいて給付額(月額)が変わります。
「生活は苦しいのに、住民税非課税世帯へギリギリ当てはまらず奨学金を申し込めなかった……」と、今までなら諦めざるを得なかった世帯の学生に朗報ですね。
家族構成や年収によって支援区分は異なりますので、日本学生支援機構の「進学資金シミュレーター」を使い、ご自身の世帯状況が新しい給付奨学金の対象となるかどうか調べてみてください。
従来の奨学金制度において「世帯状況(住民税非課税世帯)」の他に重要な審査基準であった「学校の成績評価」。これは、
大学在学中であれば、GPAが上位2分の1
高校在学中であれば、評定平均が3.5以上
※5段階評価でない学校の場合、これに準ずる成績
をクリアしていなければならないというものでした。
新制度では上記の成績基準だけではなく「面談の実施やレポートなどで学修意欲を評価する」という判断基準が審査に加わりました。
自分の成績に自信がない……という学生でも意欲的であればチャレンジできますので、ぜひ申し込んでみてくださいね。
以前まではアルバイトを前提とした生活費として、月2万〜4万円が支給されていました。
新制度では学生が学業に専念できるよう、給付額がアップ。
※住民税非課税世帯の学生の場合
国公立 | 私立 | |
自宅生 |
20,000円 →29,200円 |
30,000円 →38,300円 |
自宅外生 |
30,000円 →66,700円 |
40,000円 →75,800円 |
※上段が従来の給付額、→赤字が新制度の給付額(月額)
特に生活費がかさみやすい自宅外生への支援額は、年額に換算すると国公立であれば約80万円、私立であれば約91万円と非常に手厚くなりました。
以下が、新しくなった給付型奨学金の支援額(月額)です。※カッコ内は生活保護受給世帯
【国公立の場合】昼間制・夜間制
区分 | 自宅生 | 自宅外生 | |
---|---|---|---|
大学 短期大学 専修学校(専門課程) |
第1区分 | 29,200円 (33,300円) |
66,700円 |
第2区分 | 19,500円 (22,200円) |
44,500円 | |
第3区分 | 9,800円 (11,100円) |
22,300円 | |
高等専門学校 | 第1区分 | 17,500円 (25,800円) |
34,200円 |
第2区分 | 11,700円 (17,200円) |
22,800円 | |
第3区分 | 5,900円 (8,600円) |
11,400円 |
【私立の場合】昼間制・夜間制
区分 | 自宅生 | 自宅外生 | |
---|---|---|---|
大学 短期大学 専修学校(専門課程) |
第1区分 | 38,300円 (42,500円) |
75,800円 |
第2区分 | 25,600円 (28,400円) |
50,600円 | |
第3区分 | 12,800円 (14,200円) |
25,300円 | |
高等専門学校 | 第1区分 | 26,700円 (35,000円) |
43,300円 |
第2区分 | 17,800円 (23,400円) |
28,900円 | |
第3区分 | 8,900円 (11,700円) |
国公立と私立の学校は月額ですが、通信過程の場合、年一回の支給です。
【通信過程の場合】
区分 | (国立・公立・私立/自宅・自宅外共通) |
---|---|
第1区分 | 51,000円 |
第2区分 | 34,000円 |
第3区分 | 17,000円 |
新制度になって最も変わったことは、給付型奨学金の支援に加えて「入学金・授業料」の免除、減額が受けられるようになったこと。
ただし 入学後3ヶ月経過後(大学1年次の後期以降から支援を受ける人)は減免の対象ではない ため注意してください。
以下が「入学金・授業料」の減免の上限です。
〈昼間制〉※住民税非課税世帯の学生の場合
国公立 | 私立 | |||
---|---|---|---|---|
入学金 | 授業料 | 入学金 | 授業料 | |
大学 | 約28万円 | 約54万円 | 約26万円 | 約70万円 |
短期大学 | 約17万円 | 約39万円 | 約25万円 | 約62万円 |
高等専門学校 | 約8万円 | 約23万円 | 約13万円 | 約70万円 |
専門学校 | 約7万円 | 約17万円 | 約16万円 | 約59万円 |
〈夜間制〉※住民税非課税世帯の学生の場合
国公立 | 私立 | |||
---|---|---|---|---|
入学金 | 授業料 | 入学金 | 授業料 | |
大学 | 約14万円 | 約27万円 | 約14万円 | 約36万円 |
短期大学 | 約8万円 | 約20万円 | 約17万円 | 約36万円 |
専門学校 | 約4万円 | 約8万円 | 約14万円 | 約39万円 |
〈通信過程〉※住民税非課税世帯の学生の場合
私立 | ||
---|---|---|
入学金 | 授業料 | |
大学 |
約3万円 | 約13万円 |
新制度の「給付型奨学金(増額)+入学金・授業料の減免」により、“住民非課税世帯で今年私立大学へ入学する自宅外生” であれば、およそ最大の187万円が受け取れると考えられます。
以前の給付型奨学金は生活費・学費込みが前提でしたので、生活費とは別で学費(入学後、3ヶ月以内であれば入学金も)を支援してもらえるのは学生にとって非常に嬉しいですね。
というように、今まで経済面や成績条件をみたせず諦めていた学生も利用でき、学校へ支払う費用の負担も減るというメリットが追加された新制度の給付型奨学金。
しかし注意しなければならないこともあります。
どの学校に進学しても給付型奨学金制度が受けられるわけではありません。
「給付型奨学金の対象校」として国または自治体の確認を受けた大学等であることが必要です。
2020年9月11日時点で、大学・短大の98%、高等専門学校の100%、専門学校の73%、計およそ3,000校が対象校となっています。
文部科学省のホームページから検索することができますので、こちらのリンクで進学予定・在学中の学校等が対象校となっているか、ご確認ください。
新しい給付奨学金は同じ日本学生支援機構の
と併せて申し込みができます。※入学時特別増額貸与奨学金 についてはこちら。
ただし第一種奨学金の貸与を受ける場合、併給調整として貸与を受けられる月額の上限額が制限されます。
通常であれば、第一種奨学金の月額は
区分 |
自宅生 | 自宅外生 |
国公立 | 20,000、30,000、45,000 | 20,000、30,000、40,000、51,000 |
私立 | 20,000、30,000、40,000、54,000 |
20,000、30,000、40,000、50,000、64,000 |
と、給付額の選択ができました(※申込時の家計収入が一定額以上の方は、各区分の最高月額以外の月額から選択)。
しかし新しい給付型奨学金と併用した場合、住民税非課税世帯の学生および2/3が支援される区分にある学生は、第一種奨学金の利用は0円 という決まりがあります。
詳しくはこちらからご確認ください。
参考:日本学生支援機構「授業料等減免・給付型奨学金(新制度)の支援を受けた場合の無利子奨学金の額の調整」(PDFファイルが開きます)
日本学生支援機構以外の団体が行っている奨学金とも併用可能ですが、その場合も新制度との併用を制限しているものもありますので、各団体にお問い合わせください。
大学進学予定の高校生に給付型奨学金が振り込まれるのは、入学後の4月または5月から。しかし大学によっては入学前に入学金や授業料の納付を求める場合があります。
その際、給付型奨学金の審査に通っているからといって口座にはまだ何も振り込まれていないので注意してください。
【費用が用意できる場合】
一旦入学金などを納付しましょう。入学後に所定の手続き後、減免相当額が還付されます。
【費用が用意できない場合】
まずは大学等によって減免措置に関する取り扱いは異なるので、大学等の窓口に聞いてみましょう。
どうしても費用が用意できない場合、“借りる”形になりますが、自治体の社会福祉協議会による「教育支援資金」や「国の教育ローン(日本政策金融金庫)」などが利用可能です。
参考:入学前の支援について | 日本学生支援機構(PDFファイルが開きます)
給付奨学生として採用された場合、入学金、授業料等の減免が適用される資格を得ますが、それぞれ申込手続きをしなければ適用されません。
大学等への進学時、別途、減免の手続きを行ってください。
なお減免に関する手続きの詳細は進学先の大学等で異なるため、各自で確認してください。
在学の途中で給付型奨学金に申し込んでも、前年までに支払っていた入学金、授業料の減免措置を受けることはできません。
2019年(令和元年)度以前、新制度になる前の給付型奨学金を受けている学生が新制度へ切り替えることは可能です。ただし無条件に切り替えができるのではなく、定められた家計状況や成績・学修意欲等の諸要件を満たすか確認した上で審査が行われます。
本人が新しい給付奨学金の要件に該当しない場合、または、本人が新しい給付奨学金を希望しない場合は、引き続き現行の給付奨学金制度が適用されます。
日本学生支援機構の給付型奨学金は、大学院へ進学する際には申し込むことができません。貸与型奨学金は可能です。
奨学生に採用された後は、定期的に学業に関する審査(適格認定)が毎年1回(年度末)、高等専門学校や短期大学、修業年限が2年以下の専門学校においては年2回行われます。 基準を満たさない場合は支給が打ち切られたり、金額の返還を求められることも。
【打ち切りの例】
「警告」とは、支援は継続するものの、学業成績の向上に努力することを促す注意です。
【警告の例】
【返還が求められる例】
給付型奨学金は学生がより学業に専念するための制度。打ち切りや返還が求められることのないように勉学に励みましょう。
給付型奨学金の申し込みは、
受付期間は所属している学校によって異なるため、締め切りのスケジュールについては学校の窓口で必ず確認しましょう。
原則として、在学している学校で申し込んでください。
ただし、大学生が申し込む場合、在学校が給付型奨学金の対象校でなくてはいけません。※こちらから確認できます。
なお下記に該当する人は
を行ってください。
学校から奨学金案内と必要書類を受け取り、申し込み期限を確認したら、
という3段階をふまえた申し込みの準備をします。
が手元にあると良いでしょう。
1. インターネットでの申し込み
奨学金を希望する人は、日本学生支援機構の「スカラネット(奨学金申込専用ホームページ)」にアクセスし、必要な情報を入力します。
受付時間:8:00~25:00まで(24:00~25:00までは翌日の受付扱い。最終締切日は24時までに送信完了した申込情報のみ受付)
2. 必要書類を学校等に提出
学校等からもらった書類を作成し、期限内に提出しましょう。
受付基準は学校により異なるため、“別の学校の友人はまだ締め切り日でないのに自分の学校は締め切っていた”という場合もあります。きちんと自分で確認し、早めの準備をしておきましょう。
3.マイナンバーと身元確認書類を日本学生支援機構へ提出(直接郵送)
インターネットでの申し込み後、1週間以内にマイナンバー関係書類を、日本奨学支援機構宛に簡易書留で郵送します。
マイナンバーは「学生本人だけでなく保護者のもの(最大3人)」 が必要ですので注意してください。
マイナンバーはカードがなくても、番号が記載された通知カードがあれば大丈夫です。カードを発行する場合は申請後、交付に1ヶ月かかります。※マイナンバーカードの申請はこちら。
カード・通知カードの両方ともない場合は、「マイナンバー記載の住民票」または「住民記載事項証明書」を全員分用意してください。発効日・発行印があり、発効日が6か月以内のものが有効です。
身分確認書類は「学生本人のものだけ」 用意してください。
認められるものは
【1点の提出で認められるもの】
【2点の提出が必要なもの】
マイナンバーと身元確認書類の提出は、学校を通さず、所定の様式で直接郵送する必要があります。忘れないよう注意しましょう。
詳しい提出提出については配布された資料を確認するか、こちらの資料をご覧ください。
資料:マイナンバー(個人番号)の提出方法 | 日本学生支援機構
申込の後、審査に通れば「採用候補者として決定された」という通知が学校等を通じて届きます。
この時点はまだ候補者であり、完全に確定してはいません。
高校生の場合、秋ごろに選考結果が届きます。
4月に入学後、インターネットで「進学届」の手続きをし、「誓約書」の提出と、進学先から申込関係資料を受け取り「授業料等減免の手続き」を必要であれば行います。
大学生は春(4月〜5月)に申し込むと7月ごろ、秋(9月〜10月)に申し込むと12月ごろに選考結果が届きます。
採用が確定すると、春申込者は7月ごろから、秋申込者は10月ごろから毎月奨学金が支給され始めます。「授業料等減免の手続き」は大学等によって異なるため、窓口で確認して手続きしてください。
日本学生支援機構の給付型奨学金は2020年4月から新たに、
が行われ、経済的に困っている学生が以前よりも多く申し込め、しっかりとした援助が受けられるようになりました。進学予定の高校生はもちろん大学在学生、現行の給付型奨学金を受給中の在学生も条件を満たせば対象なので、ぜひ挑戦してみてください。
画像引用:https://www.mext.go.jp/kyufu/index.htm、https://www.jasso.go.jp、https://www.photo-ac.com